サンドリアミッション9-2「光の継承者」
超盛り上がってきた!と鼻息を荒くするのだった.
ロシュフォーニュが王都に張り巡らした魔法壁は破壊され,万難を排して「継承の儀」が執り行われる事となった.
式には関係者以外は参加できないようだったが,冒険者は大聖堂の周辺警護も兼ねて参加が認められたらしい.
「貴公がどれくらい王室から信頼されているかが分かる.まったくうらやましい限りだ」,なんておだてられた.
付き合いの長い守衛から,「ここだけの話,貴公はどちらが継承者にふさわしいと考えているのだ?」と唐突に問われた.
布石を打つに越したことは無いと,無慈悲に事を進めるピエージェ王子は,何となくサンドリア王家の陰湿さを感じる.個人的な好みで,表裏の無い「トリオン王子」の名を挙げた.
守衛的には,「思慮深い」ピエージェ王子がこれからのサンドリアに相応しいと考えているようだった.国民はそれぞれに思いがあり,国政はそれらをまとめ上げるところにある.たったこれだけの事でもなかなか難しいものだ,と,王家の苦労が少し垣間見えた気がした.
その足でドラギーユ城へ向かったら,あっさりと追い出された(笑)
大聖堂に向かっても,「継承の儀の準備が進められております」と取り合ってくれない.
教皇は部屋に引きこもっているし,あれ? 儀式はいつ始まるの??
ミッションを受け損なった?と思って別の守衛の許に向かうも何もなく.
再び北サンドリアに戻ったらイベントが始まった.
エリアチェンジが必要だった・・・のかな.理由は良く分からないけど.
聖剣を狙う賊が居た事もあり,大聖堂内は騎士団による厳重な警備が敷かれていた.
その中を継承者候補二人が静かに歩を進め,
教皇の前に揃うと,儀式の開幕が高らかに宣言される.
教皇「これより次期国王選定式,『継承の儀』をとりおこなう」
選定は,ランペール王が残したと思われる「石版」に則り行われる.
すなわち,「聖剣」をさやより抜いたものが次期国王と認められるのだった.
現王の承諾をもって,
まずはトリオン王子に聖剣が手渡される.
待てっ・・・!
だが,それを阻む何者かの鋭い声が聖堂内に響き渡った.
それは,屍鳥隊に扮したロシュフォーニュ.
彼は聖剣を奪取せんがためこの場に忍び込み,王女を人質に取ったのだった.
ロ「この姫の首が体から離れるのを見たくなければ,その剣をこちらに渡すがいい」
兄王子「ウグッ・・・」
いずれ取り返せば済む.そう判断したのか,トリオン王子は取引を持ち掛ける.
兄王子「よし,分かった.これから 3 つ数える.私は剣を投げる.お前はクレーディを放せ.いいな!?」
王女の換わりに聖剣を手にするロシュフォーニュ.
だが,厳重な警備のもとで彼の逃げ場は無いように思えた.
ロ「この聖剣を手に入れるまでの労苦に比べれば脱出などたやすいことだ」
そう強がるロシュフォーニュだったが,
トリオン王子が左手に佩くその剣を見て目を見張る.
兄王子「では,その剣が聖剣でなかったら貴様はどうする?」
ロ「なに? まさか・・・!」
兄王子「貴様が来ることなぞ,お見通しだったよ.死体があがらなかったのだからな」
ドラギーユ王家に仇なすため,王家の秘宝,聖剣を欲している.
そうロシュフォーニュを理解していたトリオン王子は,その聖剣を持ってロシュフォーニュの野望を打ち砕かんとした.
兄王子「貴様とその古き闇,永遠に断ち切ってしんぜよう.この真の聖剣でな!」
ロ「やめろ,トリオンッ!」
ロシュフォーニュの放ったその叫びは,剣からほとばしる光に遮られ,
誰もがその光に圧倒され,目を逸らさずに居られないなか,
ロ「クレーディ,頼むっ!」
王女が投げつけた何かが聖剣の力を封じる!
強大な力を放った聖剣は,その反動でトリオン王子の手を離れ,
オークの忍びがその隙を逃さない!
聖剣を奪われたことに気づいたロシュフォーニュは,ただ一人オークへと切りかかるが,
返り討ちに遭う.
現王「いったいどうなっておるのじゃ? 聖剣はどうしたっ・・・!?」
アッと言う間の出来事に人々は動転し,大聖堂には一瞬の静寂が訪れる.だが,教皇だけは一人,悲しみに満ちた顔で天を仰いでいた.
教皇「オォ・・・,なぜだ! なぜ聖剣を抜いたにも関わらず,『楽園の扉』は開かれん?」
兄王子「『楽園の扉』・・・?」
ロ「あなたたちはあの危険極まりない剣に対してあまりにも無知だ!」「あの剣こそ,タブナジアを壊滅に導いた恐ろしい邪剣なのだ・・・!」
トリオン王子ですら事態を飲み込めずにいることに業を煮やし,ロシュフォーニュは真実を口にせずに居られない.
弟王子「なぜおまえがそんなことを?」
ロ「20 年前あの剣を抜き,祖国を二度と還らぬ姿に変えたのは,誰であろうこの俺だからな」
兄王子「! 何だと!?」
それこそが,ロシュフォーニュが秘密裏に聖剣を追った理由だった.
ロシュフォーニュは聖剣が危険なものであることをその身で知ったが故に,祖国を滅亡させた罪を背負ったがために,自らの手で聖剣を探し出し封じようとした.
だが,ドラギーユ王家が秘宝を手に入れようと動きだした時,彼の葛藤が始まる.王家はその危険性を知らない.だが,それを知らせるには,彼が祖国を滅ぼした事を明かさねばならない.祖国を見放し窮地に追い込んだドラギーユ王家に,タブナジア家の嫡子がどのような顔をして自らの汚名を口にできよう.
オークの動きが,ロシュフォーニュを更に窮地に追い込む.聖剣の存在を知ったオークは,攻城兵器を用いて王都を滅ぼそうと画策している.しかも,彼らの手は王城深くにまで入り込んでいる.このまま手をこまねいていては,王都は祖国の二の舞になりかねない.だが,いかに 20 年前の恨みがあっても,サンドリアの人々の血で贖う事を彼は望んではいない.
故に,彼は王家に協力者を作ろうと企んだ.成人の儀に乗り込み,タブナジア家の生き残りである事を高らかに宣言する.儀式によって王家の闇を知った王女ならば,タブナジアへの協力は惜しまないだろう.何より,彼は彼女の叔父なのだ.彼女が敬愛する母の面影を残した・・・.
彼よりも先に聖剣を見つけ出したドラギーユ王家に対し,万が一のための魔法壁を張り巡らせたロシュフォーニュに好機が訪れる.何も知らない王家にそそのかされて魔法壁を破壊しようとする冒険者と共に,当の王女が現れたのだ.彼は死んだふりをしながら王女に近づき,共に聖剣を取り返すための芝居を打つ.残念ながら,トリオン王子の方が一枚上手だったが・・・.
ロ「剣を途中まで抜いた今なれば俺がなぜ剣を封印しようとしていたのか分かるだろう,トリオン」「姫があの夢幻花の花粉を投げなければ,お前はあの剣に滅ぼされるところだった・・・」
おそらく,ロシュフォーニュはその手で剣を一瞬抜き,あの光を使ってこの場を逃げる予定だったのではないか.そのためにクレーディ王女には花粉を持たせていた.予想外の展開にはなったが,それが功を奏していた.
ロ「一刻も早くオークたちからあの剣を取り戻し,ランペール王の墓前に納めなければ,また国を滅ぼしかねん.急いでくれ・・・」
オークによる返り討ちで瀕死の重傷を負ったロシュフォーニュは,その意識が途絶える前に,自らの望みをそう口にする.
ドラギーユ王家との因縁により紆余曲折した彼だったが,元より彼の望みは一貫していた.20 年前の悲劇を繰り返さない,それが彼の最初からの望みであり,雪辱だった.
兄王子「聖剣が,聖剣ではなかった・・・?」
現王「うろたえるな,トリオン!」
王の一喝は,混乱するこの場を一瞬で治める.次々に指示を出す王は,城に戻り今後の策を練る事を既に決めていた.
現王「教皇,あなたにもいろいろと聞きたいことがある.教えてくれますな?」
大聖堂での修羅場は,ようやく沈静するように思えた.
王城に向かうと,既に一同が会していた.
聖剣の力の一端をその身に受けたロシュフォーニュは昏睡状態らしく,今は見守るしかない容態らしい.
ロシュフォーニュを心配するデスティン王だったが,次のその言葉に人々は絶句する.
現王「あの剣が継承の儀に用いられるものなどというのは,教皇の捏造した話しだそうじゃ・・・」「そこに書かれていた真の内容は,あの剣を決して抜くことなく代々厳重に補完せよ,ということらしい」
教皇は石版を勝手に解釈していたのだった.
弟王子「教皇がなぜそんなことを・・・?」
現王「教皇はあの剣こそ『楽園の扉』を開く鍵だと思い込んでいた・・・.それはどうやらジュノのエルドナーシュ公が吹き込んだことらしいのじゃが・・・」
兄王子「すると,まさにあれは茶番・・・?」
兄王子「・・・ではいったい,あの剣の正体は?」
王女「今のところ,彼が言った言葉を信じるしかないでしょう」「”あの剣こそがタブナジアを滅亡に導いた”・・・」
王女の言葉を聞いて,トリオン王子は聖剣奪取に名乗り出る.なんとしてでもオークから剣を取り戻さねば・・・.
兄王子「父上,この指揮はぜひ私に・・・!」「ロシュフォーニュと会見してみよというクレーディの進言も聞かず,すべて私の責任!」
だが,デスティン王は王子を叱責する.
現王「思いあがるな,トリオン!」「お前は運命という名の舞台で踊っているに過ぎぬ! 一度舞台から降り,冷静になるがいい」
王は,この混乱の根元に自分が居る事をよく理解していた.
自らの老いに弱気になり,ランペール王の秘宝を口にしたこと.教皇の言葉に盲目になり,あわよくば後継者争いを解決せんと二兎を追ったこと.
ここに居る誰もが,彼の言動を信じたが故にこの混乱の渦中に居た.だから,王は今回の件を自らの手で幕引きしなければならぬと決断していた.
現王「今回の指揮はわしが取る」
現王「冒険者よ,こんなドラギーユ王家を見て笑っているか.だが,もしも,もしも我々を見捨てていなければトリオンとともに前線に赴いてはくれぬか」
彼は王家の,自らの行いを恥じ,そのうえで冒険者に助力を仰いでいた.オークの思惑どおりに事が運べば民が苦しむ.彼は,それを止める事こそ彼ら王家の使命だと理解していた.
彼こそがサンドリアの現国王.いま,もし,ここにロシュフォーニュが居れば,彼は彼があるべきだった真の王の姿を窺い知れただろう・・・.
王の静かな決意を,伝令の慌ただしい声が遮る.
剣を奪ったオークたちは北の地フェ・インにて陣を張ったとのこと!
広間をつんざく兵士の声が,集まった人々の背を叩く.
”サンドリアの命運をかけた戦争”が,幕を開けようとしていた.