Vana'daily

Vana'diel 一人旅の日々.ばなでいり.

アトルガンクエスト「炎熾す鎌」その2

予想外のシリアスな展開なのだった。

 

ハイドランジアを手にもう一度あの現場に戻ると、

一人の女性が立っていた。

彼女はシャイーハ。査問委員の一人であり、ガダラル将軍のかつての部下。

彼女は誰かを待っていた。

待ち人が来るまでの暇つぶしなのだろうか、シャイーハはガダラル将軍との過去を語り出す。

順風と思われた東方遠征での、不意な形勢逆転。

圧倒的に不利な状況での撤退戦に、

小隊長であった彼女は、自らの命を投げうち隊員を救おうと決意する。

その窮地を救ったのが、

ガダラル隊長だった。

ラル「シケた面しやがって」「お前のような無能は、我が隊には不要。即刻、解任する!」

シャ「なんだと!? ・・・いくら、隊長とはいえ、何の権利があって!」

ラル「それだ! 作戦中に、部下が勝手に死ぬ権利なんざ ねぇんだよ! 俺の隊ではなッ!!」

勢いでシャイーハの決意を鈍らせたガダラルは、続く一言で彼女を絶句させる。

ラル「シャイーハ、敵に降れ。俺を手土産に亡命するんだ!」

シャ「断じて、お断りだ! 隊長の首を盾に、生き長らえるなど・・・!」

ガダラルの提案を全力で否定するシャイーハだったが、彼女は気が付いていた。

ラル「いいか! こいつぁ、死中に活を求める作戦なんだ。伸るか反るか、同じ死ぬなら賭けてみやがれ!」

部下のために命を投げ出そうとしたのは自分だったではないか。その自分が、なぜ隊長の作戦を拒絶できよう。

シャ「・・・」「・・・わかった」

こうして二人は敵陣へ向かう。

シャ「聞くところでは、東方は皇国より実力主義とか。伸し上がって、客将になってやりましょう」

それは、死を覚悟した者同士が交わした軽い冗談だったろう。

ラル「悪くねぇ。ご祝儀に、俺がとびきり高価な ハイドランジア を献上してやらぁ」

それが、彼女とガダラルが交わした最後の言葉だった。

驚いたことに噂は本当で、いつしか彼女は東方軍での地位を築いていた。

今の彼女は東方からの間者。

その目的は、ガダラルを将として東方軍に招き入れる事にあった。

ガダラルもシャイーハの存在には気が付いていたらしい。

そして、その目的も薄々・・・。

シャ「ガダラル隊長! 私と一緒に来てくれ」「そして、かつてのように 轡を並べ、共に戦場に・・・!」

ラル「・・・断る」

シャ「・・・なぜ!?」

ガダラルは全てをお見通しのようだった。

ラル「ああ? 答えは、あっちのケチなお仲間に聞いた方が早いんじゃねぇか?」

そこには査問委員長の姿。

彼もまた間者の一人であり、皇宮内部へ更なる間者を引き込む内通者なのだった。

委員長「・・・シャイーハ、なんのつもりだ。勧誘に失敗したら、速やかに殺せ、と命じたはずだが?」

悪びれる事無くそう言い放つ委員長。彼がここまでガダラルに拘る理由は分からなかったが、ガダラルをおびき出す餌としてシャイーハが使われた事は明らかだった。

ラル「あんなヤツと手を組むのか?」

シャ「・・・ええ。でも、私は 貴方を殺したくない。だから、たとえ力ずくでも・・・」

それはガダラルを連れ出す最後の機会だった。

だから二人は、

この場で、

雌雄を決するほかない。

互いに譲る気配は無かったが、

シャイーハの渾身の一撃が

ガダラルを捉えたその瞬間、

反撃の一手がシャイーハの身体を高々と宙に跳ね飛ばし、

彼女の企みは潰える。

ラル「・・・腕上げたじゃねえかッ!」

ラル「・・・しかし、まだまだ 俺ほどじゃねえな」

この結末を、彼女は最初から分かっていたのだった。

四蛇将に近づき離間を謀ろうとも、ガダラルに対する信は篤く、

現場に居合わせた一介の冒険者すら、炎蛇将のために口を閉ざす。

今や皇国と強く結びつく将軍ガダラルに、部下であっただけの女の言など届くはずもない。

分かっていながらもこの結末に打ちのめされたシャイーハに、

味方の矢が刺さる。・・・あの撤退戦と同じように。

シャ「私は東方に行き、命を得たが・・・ もっと大切なものを・・・」「失ってしまったようだ・・・」

容易くコマの命を奪おうとする査問会のやり口に怒り心頭のガダラルは、

その炎をもって男を追い詰めるが、

すんでのところで逃してしまう。

そして現れる不滅隊。

ようやく内通者の尻尾を掴んだのか、ラウバーンはシャイーハ捕縛のためにこの場にやってきたのだった。

ガダラルの意識がラウバーンに向いたその一瞬にシャイーハはその腕より逃れ、苦しげながらも元隊長に言い放つ。

シャ「・・・ガダラル将軍。またいずれ、刃を交えん。それまで・・・」「くたばるなよ!」

あの時のように、絶体絶命のなかで隊長に救われた命。

ラル「いいか! こいつぁ、死中に活を求める作戦なんだ。伸るか反るか、同じ死ぬなら賭けてみやがれ!」

彼女はいま一度のチャンスを求め、崖からその身を翻す。

ラウ「しまった!! 下だ! 崖下に回れ!」

ラル「お前もな・・・」

彼女の姿はもう見えない。

ただ、ハイドランジアの花だけがそこに残されたまま。

ラル「考えてみりゃ、俺らは 湿っぽいのはガラじゃなかったな、シャイーハ!」

そう言うとガダラルは、ハイドランジアの花束を波間に向かって放り投げる。

ラル「ほらよ、受け取れ! 約束の出世祝いだぜ・・・!」

 

シャイーハがそうであったように、ガダラルもまたシャイーハの事を忘れていなかった。だが、二人の再会は互いに思いもよらない形で果たされていた。

 

宙を舞い波間を漂う花びらのように、彼らもまた、運命に翻弄されていた。

ただ、それだけの事だった。