アトルガンクエスト「白き神」その12/「冥路の磁針」その14
どこかで掛け違えていたのだった。
先にこちらの結論だけを述べると、アレキサンダールートは相変わらず何も変わらなかった。
前回のオーディンの言葉を信じ、
最後のアイテム集めに勤しむ。
この土下座も今回が見納めか。シミジミ。
なんて油断していたら鑑定に失敗し(14勝9敗)、
逸る気持ちを抑えながら御守を集め、
今度は成功(15勝9敗)。
負けが込んできた気がするけど、このカウントもこれで終わりだから気にしない!
御守を握りしめながら偽オーディンとの戦いに挑み、
ついに念願のこの時が・・・。
(・・・なんか言ってよw)
オデン「見事なり! 猛き魂、豪なる意気。汝が望みに相応しき力なり」
冒険者を不安にさせる数瞬ののち、ドヤ顔の騎士(兜で見えないけど)は冒険者が待ち望んだ一言を高らかに宣言する。
オデン「我、汝が望み是認せん」
キ、キタワーーーーーーーッ!!!!!!!!!
だが神は気まぐれ。
オデン「されど・・・かの依り代 手放すには惜しい逸材ゆえ・・・」
あれほどの試練を乗り越えた冒険者に、神は後付けの条件を突きつける。
オデン「汝、死した暁にはその魂余に捧げ、忠誠なる騎士となれ」
・・・ぐぬぬ。ここで No と言えば全てを反故にされる恐れがある。オーデンはただ騎士の解放を願う冒険者の本気度を試すために、余興としてこの舞台を用意しただけだ。そして、願いを叶えるうえで神は必ず贄を求めるものではなかったか。ルザフの替わりが無い状況をオーディンが認めるとは思えない。かの神もまだ、白き神との決戦を諦めていないはずなのだ。
ここは Yes を答えるべきだ。
だが、ここで Yes と答えたとして本当にそれで良いのか?
内心での二度の問いかけに暫く間を置き、
・・・冒険者は恭順の姿勢を取る。
その答えに満足し、オーディンは地の底から響くような笑いを漏らす。
オデン「ハハハハハハハッ!」
オデン「汝が願い叶えられたり! 楽しみにしているぞ、余の騎士よ!」
そう言い残すと、オーディンは軽やかに馬を駆りつつ冥府へと還っていった。
残された冒険者は、この新たな契約について思案する。
いつ死ぬのかなど分からないし、死んでからの事など想像すらできない。だが、考え対策する時間はきっとある。例えば、エシャンタールやセルテウスのような永遠の生はどうだろう。騎士の悔しがる顔が目に浮かぶ(兜をしてるけど)。たとえ死して冥路の騎士になったとしても、オーディンが顕現する条件は恐らく怒り。延々と続くループのなかでこの猛き魂、豪なる意気が鍛えられたのならば、審判の日を迎えないために自らを更に高める方法もあり得るかも知れない。それに・・・あの「歪」を塞ぐことがこのクエストの目的ではなかったか。
いずれにせよ冒険者には未来があり、そこに勝機が必ずある。アトルガンの冒険とは、未来を切り拓く冒険だったはずだ。
そんなことをつらつらと考えていたら、
目の前に光が集まり出し、
ルザフが現れる。
オーディンは約束を果たしたのだった。
開口一番、ルザフからはなぜ彼を助けたのかを問われたが、
理由は明白だった。
あの時、冒険者はルザフに頼まれたのだ。アトルガンの秘宝を。イフラマドの希望を。
だから、今、その役目をルザフに返そう。
提督「そうか。あのときの言葉を・・・ アフマウを、守っていてくれたのだな」
そう、だから、これからはアフマウと共に・・・
冒険者が伝えたい言葉は、だが、ルザフには届かない。
提督「今度は俺が・・・ アフマウと、お前のために この国を・・・アトルガンを見守ろう」
違う、そうじゃない、望んだことはそうじゃ・・・。
そう叫ぶ間を与えること無く、
ルザフは星屑となって冒険者の前から消えてしまった・・・。
唖然とした冒険者は混乱する頭のまま急ぎ皇宮へ戻り、
双人形に事態を伝えると、
「心の準備」を整える間もなく、
あの場所へと飛ばされた。
ルザフが冥府へと消えた場所。
アフマウが思い人を偲ぶ場所。
冒険者がすべてを伝える必要はなく、
アフマウは既に何が起こったのかを理解していた。
動じないアフマウの姿を見て、冒険者は悟った。
冒険者は初めから間違っていたのだ。いや、思い上がっていたのだ。
オーディンが言っていた通り、ルザフは「手放すには惜しい逸材」だった。だから、彼はこの場から消えた後も冥府に囚われていた。そして、その替わりが見つかったのならば、200年前に死んだはずの彼は本来のあるべき姿に戻るしかない。
亡国の王子を冥府から助け出し、聖皇と共に手を携えてこの国を再び興す。
そんな少女漫画のような展開なぞ、誰も望んでいなかったし期待すらもしていなかった。アフマウは冥府に囚われたルザフの解放をただ願っていたのだ。このような決着になる事を十分理解しながら、なおも彼の平穏を乞うその愛情ゆえに。
丞相に諭された「心の準備」が、冒険者にはまったく出来ていなかったことにようやく気付いた。夢物語だけを追い続けたこの数日と、今まさに目の前にあるこの現実とのギャップに、ただ打ちのめされるしかない。
ただ一つだけ冒険者の心を救ったのは、本心を伝えるアフマウのその表情だった。
マウ「そなたは、わらわの・・・」「ううん・・・ マウの、大切な・・・」
冒険者が守りたかった笑顔とは違う、だが、憂いを断ち前を向く者の誇らしげな微笑だけが、冒険者の心を僅かに軽くしてくれていた。
ルザフは戻らない。
だが、アフマウには3人の仲間が居た。
ようやく前を歩いて行ける。アフマウは、きっと、そう感じているに違いなかった。
いつも通りハザルム試験場の「歪み」の調査結果をガッサドに渡した。
これまでの試行によって「歪」の実態はその片鱗が見え始めたようだが、「歪」を塞ぐ手立てについては端緒に就くことすらままならないようだ。
ガッ「ふ・・・安心しろ」「アトルガンのため・・・皇国の民らのために、今は見えぬ答えを探し続けるつもりだ」
いつまで続くのか分からない「歪」の対処に、ガッサドはなおも前向きに臨もうとする。
ガッ「お前を見ていると、人の意地というものを 信じられるような気がするのだ」
ああ、そうだ。冒険者はここでも間違えていたのだ。
現実離れした少女漫画的ハッピーエンドに、ありもしない権謀術数。
「歪」に関してガッサドは一貫して塞ぐことを第一に考えて、まずその情報収集の要員として信頼する冒険者の名を最初に挙げてくれたのだ。もし彼に後ろ暗いものがあれば、これまで同様ラウバーンに任せていただろう。
ああ、いったい何処で掛け間違えてしまったのだろう。
冒険者の(文字通り)数えきれない貢献により十分なデータが集まった事もあり、ガッサドはハザルム試験場での観測を一時休止することを提案する。
だが、ここで冒険者は異を唱える。
聖皇「冒険者にも 思うところがあるのでしょう」「ハザルム試験場の 引き続きの観測を許可します」
丞相が帰りルザフが還った今となっては、もはや「歪」の調査に危急の要件は無かった。
だが・・・冒険者が死んだときに備えて、つまり、冒険者が冥路の騎士として「審判の日」を迎えるときに備えて、「歪」を塞ぐ手立てを早めに模索する事は悪いことではない。
ガッサドはデータが十分と言うが・・・冒険者がアトルガンでこれから為すべきこととして、「歪」の調査が大事であることに変わりは無かった。
ガッサドへの報告を終えて聖皇の前を辞すと、
双人形が迎えてくれた。
アヴゼンからは、ナシュメラの傭兵なのだから主に無断で契約するなどもっての外、と腹を探られたが、
オーディンとの契約についてはバレていないようだった。
うーん、どこかでボロが出てしまう気がするのだが・・・。
メネジン、
いや丞相からは、「それがお前の道ならば、止める道理はない」と、明らかに状況を理解しているような素振りをされた。
益々、どこかでボロが出てしまう気がするのだが・・・。
このようにして、冒険者の思っていなかった決着によってルザフ救出、いや、ルザフ救済のクエストは幕を下ろす。
メネ「冒険者・・・ アトルガンの守護者よ。これからもナシュメラと皇国を頼む」
最後に丞相からはそのように重ねて頼まれたのだが・・・ 冒険者は「アトルガンの守護者」の名を返上しなければならない。
なぜなら、いま、ルザフこそがその名に相応しい本当の守護者となったのだから。
そして、冒険者は少し反省しなければならない。
物語の展開が全然読めていなかったことを(笑)