Vana'daily

Vana'diel 一人旅の日々.ばなでいり.

バストゥークミッション9-2「双刃の邂逅」その2

大団円の余韻に浸るのだった。

 

バスミッションの続き。

フォルカーと冒険者の双刃の前に、さすがのザイドも膝を屈する。

暗黒仮面「まさか、ここまで腕をあげているとは、な・・・」

隊長「私1人ではとてもおまえには・・・」

思わず駆け寄るフォルカーに、苦し気に喘ぐザイドはしたり顔で頷く。

暗黒仮面「それが・・・答えだ」

暗黒仮面「20年前、闇の王と剣を交わしたときに、同じ哀しみを感じとった」

憎悪。ガルカと言う種族が心の奥底に抱く闇。

暗黒騎士「その哀しみの意味を探し、闇をさまよったが、結局、その答えの行く先は、光あるところにしかないのだ・・・」

闇の先は闇。憎悪は憎悪を呼び、繰り返された200年の重みが一人の語り部を狂わせた。それら全ての業を負う暗黒騎士もまた、闇の世界を抜け出す術を持たない。

暗黒仮面「おまえは私と違い、光ある所に生きるべき存在・・・。だからこの国の行く末は おまえに託さねばならんのだ・・・」

隊長「何を言う・・・! どれだけ多くの人がおまえの帰りを 待ち望んでいたか・・・」

暗黒仮面「後ろを見ろ・・・ 奴らの心配そうな面持ちが すべてを語ってくれるだろう・・・」

大統領に派遣を止められたはずの銃士隊が、いつのまにかフォルカーの背後に立っていた。

隊長「おまえたち・・・」

ナジラレ「隊長! ひどいじゃないですか! 黙っていくだなんて・・・」

フォルカーを立ち直らせるために考えたのだろう。銃士隊の面々は自分たちの思いをそれぞれ口にしていた。

鉄喰「我々の仕事は・・・」「人々の普通の幸せを守り、人々の希望でありつづけること・・・」

アヤメ殿「・・・皮肉なことですが、ナジが腕がなまるとグチを言えるような 世の中を作り上げることが我々の仕事ですよ」

痛みが引いたのだろう、すっくと立ちあがったザイドが誰ともなく言う。

暗黒仮面「冒険者の時代・・・。それは、英雄なき時代・・・。そして、誰もが英雄になり得る時代・・・」

暗黒仮面「そんな時代だからこそ、彼らを導ける存在が必要なのだ。過去の苦しみを乗り越えたおまえにこそ、その役はふさわしい」

隊長「私に、できるだろうか・・・?」

不安そうに問うフォルカーに、過去を背負い続ける暗黒騎士は断言する。

暗黒仮面「おまえにしか、できないことだ」

闇の王殺しも、語り部殺しも、もはや時代にそぐわず消えゆくのみ。一人が名を上げる英雄の時代は終わったのだ。

暗黒仮面「私は・・・闇に帰るとしよう」

そう言って背を向けようとするザイドをアイアンイーターが引き止める。

鉄喰「ザイド殿! ガルカの民は、あなたのことを・・・」

暗黒仮面「私が帰ったのでは、グンパの決断も意味を失ってしまう」「おまえはグンパを支えてやってくれ・・・」

グンパはラオグリムもザイドもウェライももう居ないと言っていた。頼るべき過去の存在を否定するグンパにとって、もはやザイドは忌むべき亡霊なのだ。それが業を背負うと言う事の意味だった。

だから、フォルカーはザイドとのいつかの再会を願うしかない。

隊長「私がこの役目を終えたとき・・・ もう一度手合わせをしてくれるか?」

暗黒騎士「いいだろう。しかしひとつ約束しろ。そのときは、今回のような手加減は無用だ」

 

大統領府に戻ると、

微妙な空気が流れていた。

大統領「バカどもが雁首をそろえて・・・」

その第一声は痛烈だった。

大統領「私の命令は、 ザイドを引っとらえてこい、というものだったはずだぞ」「その結果が、間抜けな隊長の復帰報告か?」

隊長「プレジデント・・・」

混乱の原因はすべて自分にある。そう理解しているフォルカーは大統領に返す言葉もない。

大統領「もうよい、気分が悪い。下がれ。冒険者にはおまえらの方で 報酬を与えておけ・・・」

数瞬の沈黙のあと大統領は一同に背を向けると、いかにも不機嫌そうな風でズカズカと自室へ戻っていた。

ナジラレ「・・・プレジデント、怒らせちゃいましたかね?」

だが、ナジ君を除いて誰もが大統領の深意を理解していた。

補佐官「いや・・・あんなにプレジデントが 御機嫌が良いのは、久しぶりだよ・・・」

シド「相変わらず素直に なれぬ奴じゃのう・・・」

そーゆーとこだぞナジ君。

アヤメ殿「プレジデントのことですから、後で減俸の通達ぐらいはまわって きそうに思いますけどね」

ナジラレ「マジっすか!? 勘弁してくださいよ・・・今月厳しいのに」

そーゆーとこだぞナジ君。

冒険者にはおまえらの方で 報酬を与えておけ・・・」、そう言った大統領の意図は十分伝わっていた。

隊長「みんなにも・・・ そして、君にも、本当に世話になったな」

フォルカーは冒険者に改めて礼を言う。

隊長「あいつのように業を1人で背負っていくことは 私にはできない・・・」「しかし、私には 私にしか背負えないものがあるはずだ」

アヤメ殿「国の中にいると、見えないものも たくさんあります・・・」「そのことを我々が 忘れないためにも、あなた達の 存在は貴重なのです」

冒険者の時代。英雄なき時代。それは、各々が自らの力のみを頼み、誰に縋るでもなく一人立つ時代。誰もが何かの英雄になり得る時代を、バストゥークは迎えようとしていた。

このようにして冒険者はランク10になり、バストゥークを支える一人として認められるのだった。

 

鼻歌交じりに執務室を後にすると、ナジ君に嫉妬の目を向けられた。

ナジラレ「いいよな、おまえは報酬、オレは減俸・・・」

そーゆーとこだぞナジ君。

何か言いたそうにしていたナジ君だったが、「そうそう、そういえばな」と話を切り替える。

ナジ君「おまえ宛に手紙を預かってたんだ」「ほらよ。誰からかは読めばわかるだろ」

「恥ずかしいから内緒」と言っていた彼女には、面と向かって話す勇気がまだ無かったのだろう。少し緊張したような筆跡ではあったが、手渡された手紙には何葉にも亘る思いが綴られていた。

前略、冒険者様・・・

バストゥークのこと、好きですか?」

私は・・・ この国のことがキライでした。

でも最近、・・・そうでもないかな・・・って思うんです。

それで、もっと はっきりとみんなの声、聞いてみたいって思ったんです・・・。

親友に。

献立に悩む母親に。

よそ者にわだかまりを持つガルカに。

鉱山事故の生き残りに。

・・・語り部に。

グンパ「好きかどうかなんて どうだっていいんじゃない?」

そう嘯く彼の言葉に以前は腹を立てたりもしたけれど、今はとても重たく私には思えます。

グンパ「ただ・・・国なんて気にせず、自由気ままに生きようと思うほど、絶対にぶつかるものがあるんだよね」

グンパ「責任って呼ぶんだよね、それ」

あっけらかんとした彼の言葉の端々に、味わった者にしか解らない200年の重さが今は感じられるのです。

グンパ「何もかも人任せに していいんだったら必要ないこと・・・。でも自分の力で、そしてみんなと 生きていくためには必要なこと・・・」

グンパ「ま、ねえちゃんも もうちょっと責任ある行動をだな・・・」

相変わらず一言多いんですけど、ね。

それから、異国で自分を試す女性に。

類稀な技術者に。

門番に(笑)

大統領補佐官に。

いつも頼りになる銃士隊No.2に。

もちろん大統領にも!

照れを隠す父の姿に笑いが止まりませんでした。

そして、隊長さんに。

隊長「私はこの国を愛しています」

愛と言う言葉に私は息を呑みました。

隊長「みんなで苦しみ、みんなで喜びを わかちあい・・・」「だから私の背負った 苦しみも、みんなの苦しみの一部です。一緒に喜べる日々のために、頑張ろうと 思います」

私、もっとこの国を知りたいと思いました。

そして、いつの日か この国のみんなの役に立ちたい。目標は・・・まだ秘密ですけどね。

フォルカーさんだって、叔父上と比べられ、頑張ってきたんです。私だって・・・。

長くなりましたが、最後に・・・ありがとう。

あなたの戦績は、とても偉大なことだと 思います。

けれど、もっと大きなものを あなたは私や、バストゥークの人々に 与えてくれた。

これからも、一緒に 苦しみも、喜びもわかちあえる存在で いてください。私も、そうなれるように 頑張ります。

それでは、また・・・。

コーネリアより。

手紙を鞄に収め、しばし余韻に浸った。

お礼を言うために彼女の許を訪れたが、勉強に飽きたと言う彼女は「出かけて来るね!」と言うと足早に去っていった。

手紙のことが気恥ずかしいのか、街の人々を相手に忙しいのか、他の何かに打ち込んでいるのか、は判らなかったけれど、彼女が目標に向かって頑張っているだろう事は感じられて、思わず笑みがこぼれた。

この国は大丈夫だと、心の底からそう思えた。