サンドリアミッション9-2「光の継承者」エピローグ
悲しい別れなのだった.
「聖剣」を封印し竜王の墓前から戻ったデスティン王は,「大事な話がある」らしい.
王家の者や騎士団をも集めたこの大広間で,王は「これから重大な発表をしたいと思う」と切り出す.
王「まだ,わしは退位せぬことにした.そして今後の王子たちの成長を見極める」「しかし,彼らが相応しくないと思えばわしは血統にこだわらずに王権を禅譲しようと思う」
聖剣の(嘘の)伝承に惑わされた王は,一連の混乱を通して一つの結論に辿り着いていた.
王「力で何かを得ようとしていたのは,我々エルヴァーンの驕慢だ.今後はエルヴァーンと言わず広く才能のある人々を登用し,それぞれの足りない部分を補って国を作っていくべきであろう」
それは,ドラギーユ家による王政を廃止する言葉にも聞こえた.
先王の威厳を背に王が政を司り,嫡子がそれを継ぐ国の在り方.だが,竜王のような覇王が聖剣を片手に国を平らげる時代はとうに終わっていた.血と力の継承こそが国を成り立たせると,いつから勘違いしていたのだろう.それこそが王のそもそもの驕慢なのだった.
己が力で国を興した偉大なる王は,国に灯る儚く美しい光をこそ守り絶やさずにいるべきと説いた.王の血の継承ではなく,国に灯る光の継承.夜空にさんざめく星々のように,この国のいたるところに灯る希望の光,民のための国造りこそ王の為すべき事なのだと,デスティン王は気付いたのだった.
王「例えばこの度,冒険者でありながら,我がドラギーユ家,ならびにサンドリアに多大なる貢献をしてくれた人物がいる.彼女等も王にふさわしい資質をもっているといえよう」
人々の目線が一斉に冒険者に集まる.
・・・こそばゆい.
王はこれまでの功を労い,「王国旗」を賜るとおっしゃる.
国旗とはその国を示す旗であり,その国を象徴する.これを王が下賜される事は,王が冒険者の功績を国を挙げて認め,また,冒険者自身をサンドリア国民と認めた事を意味していた.
根無し草たる冒険者にとって,これ以上の名誉は無かった.
王「ここまでサンドリアに尽くしてくれるものがいるのだ.我々は自分の国を誇りに思っていいはずだろう」
タブナジアを知りたくてサンドリアにやってきた冒険者だったが,王家のゴタゴタ?に巻き込まれて気が付けばこの立ち位置だった.
サンドリアに尽くしたか,と言うとそうでも無く,むしろ冒険者魂と言うか,王家何するものぞと言う反骨精神の方が強かったのだが(笑),大国の王に信頼を置いてもらえるのならば,冒険者冥利に尽きるとは言える.この多くの信頼には応えなければならない.
主要メンバーの,
それぞれに,
挨拶を交わす.
将軍が倒れた事によりオークは急速にその勢力を落とし,各地では残党狩りが始まっているらしい.一時は王城深部までオークの侵入を許していたのだから,ここで気を抜かず,クリルラには神殿騎士団として指揮を振るって欲しい.
と言うか警備がザルすぎでしょここw
「驕慢」と言う心の闇を抱えるエルヴァーン.
ピエージェ王子は,「私たちエルヴァーンは他人の意見に耳を貸さずにいつも自分が正しいと思うくせがある」と反省していた.
故に彼は,王の行いに倣い,様々な者たちの意見を取り入れていこうと考えているようだった.
弟王子「君にもし子供ができたなら必ずやその子に自慢できるような国になっていることを約束しよう」
なんて事まで言い出していた.気が早い(笑)
兄王子「父上のおっしゃる通り,私などよりもお前の方が国をよりよく導いていけるかもしれんな・・・」
と,トリオン王子は相変わらずの超真面目っぷりと言うか,自分を含む周りの見えなさぶりを発揮していた.
ただ,「国王にふさわしくなくとも,必ずや 1 人の誇り高き人になりたいと思う」と真顔で言えるその素直さ,純粋さ,相変わらずの彼の美徳に眩しさを覚えた.
なんでもかんでも正直に生きれば良いわけではないだろうが,民と共にあろうとする現王に最も近いのは,血筋とは関係なく彼のように思えてならなかった.
彼にとって,ク・ビアの闘技場での一戦は生涯忘れられぬもののようだった.
あの時は黒魔オークに気を取られてトリオン王子の事をすっかり忘れていた,なんて事は口が裂けても言えない雰囲気だ(笑)
兄王子「サンドリアに寄った際には是非ここにくるがいい.1 人の友として歓迎させてくれ」
アトルガンミッションのその後に王子が出てくるのかは分からないが,もし出てくるとしたら,もう少し優しくしようと思った(笑)
クリルラに「魂を弔ってくれ」的な事を言われていたので,大聖堂にやってきた.
教皇は監視付きの謹慎処分中らしい.王を誑かすばかりか一時は王都を危機に陥れるところだったのだから,教皇の罪は相当重いに違いない.オークとの戦いに勝利したその恩赦で命は繋がったとしても,二度と日の目を見ることは無いのかもしれない.
教皇の部屋へ向かうと,ピエージェ王子と出くわした.
教皇とは長く共に居た(ように見えた)王子にとって,教皇の行いには多くの疑問があるだろうし,何よりその身を慮っていてもおかしくはない.
教皇との謁見の機会は彼に譲ることにした.
しばらく人払いをすると,
部屋の奥で一身に祈りを捧げる教皇へ,ピエージェ王子は恐る恐る声をかける.
王子「なぜ我々に聖剣を抜かせ,『楽園の扉』を開こうとしたのです?」
少し不躾とも思える王子の問いに,だが,全てを失った教皇は何を構える事も無く素直に答える.
教皇「わたしは大戦の後,タブナジアの惨状を見て,『楽園の扉』を開かなければこの世は救えまい,と思った・・・」
彼もまた,タブナジアに運命を狂わされた者なのだった.
王子「『楽園の扉』とはいったい・・・?」
教皇「文献を調べても,それが何なのかはまったく分からなかった・・・」
恐るべきことに,教皇ですら,「楽園の扉」が何なのか,それが何をもたらすのかを知らないようだった.だが,「闇」を抱える人は男神の呪いにより「楽園の扉」を求め開かずに居られない.「楽園の扉」が何であろうと,教皇にとっては扉を開くことが最重要であったのだろう.
「楽園の扉」を求める教皇の前に現れたのは,エルドナーシュだった.
彼は「聖剣こそが楽園の扉を開く鍵だ」と教皇に告げたらしい.もちろん,教皇はエルドナーシュの意図を今になって図りかねていた.タブナジアの惨状を招いた剣を,なぜ鍵とそそのかしたのか,と.
(もちろん,エルドナーシュは「楽園の扉」計画の再始動を図っていた.聖剣が光の器,つまり母なるクリスタルの力の塊であるとするならば,クリスタルラインの正常化によるトゥー・リアの再起動を求めていた彼らにとって,聖剣はその始動キーに成り得たのかもしれない)
教皇「しかし,『楽園の扉』とはそれぞれの心の中にあるものだということに,ようやく気づきました.そしてわたしはずっとその扉を自ら閉ざしていました」
王子「闇に閉ざされし心・・・」
教皇「この罪深きわたしに,寛大なる王は恩赦をお与えになりました」「わたしはここで悔い改め,1 つでもこの地上に希望が生まれるよう祈るとします.この身が朽ち果てるその日まで・・・」
王子「・・・その言葉,信じましょう」「今はお互いの希望がいつかかなうことを願いましょう・・・」
タブナジアの惨劇を繰り返さないために楽園を求めた教皇は,その惨劇の元凶である聖剣を求めることで,同じ過ちを繰り返す可能性があった.何という皮肉だろう.運命を狂わされ一生涯の罪を背負う事になった彼もまた,タブナジアの被害者でしかないのではなかろうか・・・.
関係者のその後を一通りり確認したが,ウィンダスミッションで見たエンディングが流れない.
あれ? どうなってるの???
アチコチ歩き回ったが,エリアチェンジをすることで,
続きが始まる.
クレーディ王女は,まだ傷の癒えやらぬロシュフォーニュの姿を探していた.
「いったいどこへ行ったのかしら・・・」,そう言いながらサンドリアの街を彷徨う姫.
彼女の視線から遠く離れた場所に,探し人の姿はあった.
ロ「ローテ姉上,あなたの子たちはみな立派に育っているよ.安心してここで眠っていてくれ」「残念だけど,俺にはここにいる権利はない.だから去ることにするよ」
権利.
彼はこの平和で豊かな国に居る許しを誰にも得ていないと,そう感じているのだった.そして,その許しは永遠に得られないだろうことも.
ロ「これからが本当の始まりなんだ.まだまだ俺にはやらねばならぬことがある.・・・君だってそうだろ?」
彼が背負う十字架は,彼が歩みを止めることを許さない.
ロ「でも,君ともまたいつか,どこかで会えそうな気がする.その時はこのサンドリアがより一層輝きを増していることを,お互いに祈ろうじゃないか」
有難いことに,彼も希望を捨て去ったわけでは無いようだった.
どこかで会えそうな気がする.
きっとそこは彼の故郷.生き残った人々が再開拓し,いつかまた取り戻そうと言っていたあの亡国の首都.輝きを取り戻すには,まだ多くの時間が必要だろうが・・・その地にもまた,儚く美しい光がいくつも瞬いていることを,冒険者は既に知っていた.
彼には彼の歩むべき道がある.
だから冒険者は,まだタブナジアに居る人々の事は噤んでおこうと決めた.
いずれ彼は自らの足で辿り着くだろう.当時の面影をそのまま残す,あの岩の麓にある古き都に.その生き残りたちのいる地下壕に.
だから,これは別れではない.
冒険者はそう思いながら,いつもどおりサンドリアの街へ一人戻っていくのだった.
その後にどうなったのか,歴史家が知ることは無いのだろう.
だけど,その日々だけはいつまでも残り続けていく.
朽ち果てることなく,それぞれの心の中に・・・.
たとえいつかヴァナ・ディールが消えさる日が来ようとも,いつまでも,みんなの心の中で,輝き続けることだろう・・・.
いつまでも,いつまでも・・・.
永遠に・・・.
(サンドリアミッション 完)
感想.
正直,もっと王宮の内情を暴露するようなウツウツドロドロした話が続くかと思っていたのだが,蓋を開けてみると「聖剣」を軸に随分とアッサリとしたシナリオだったように思う.と言うか,ウィンダスが複雑すぎたのかも.
兄派と弟派が王都を分断して血みどろの後継者争いをするとか,サンドリア王家の乗っ取りを企む教皇一派がオークと結託して王家を血祭りに上げんとするとか,サンドリア港で勢力を拡大するブルゲール商会がマフィア化して天晶堂と血みどろの抗争劇を繰り広げるワンス・アポンナタイム・イン・サンドリアとか,色々と期待をしていたが(笑)
ただ,タブナジアの「悲劇」が重すぎて,途中から「血みどろ・・・」はどうでも良くなったと言うか,もっと悲惨な事が起こっていて絶句したと言うか,もうロシュフォーニュが可哀そう過ぎて最後の彼の背に泣きそうになった.
去り行く彼にとって,きっとサンドリアは眩しすぎたのだと思う.
驕りを捨てて国の在り方に立ち返ることのできる希代の名君.性格は異なるが王の風格を持つ二人の後継者.王家の闇を知り正義感を持って立ち向かおうとする清廉な姫.能力のある多くの家臣と武を誇る騎士団.オークとの戦いに疲弊した国土も,この戦いをきっかけに回復するだろう.
それらの何もかもは,いつかのタブナジア侯国で有り得た未来.サンドリアが希望に満ちるほど,希望の潰えたタブナジアの影は深まらざるを得ない.罪を負う彼にとって,それは正視に堪えない光景だったろう.
プロマシアミッションをやっておいて良かった.あのエンディングを見ておいて良かった.タブナジアの街を遠くから眺めておいて良かった.タブナジアの生き残りが居て,プリッシュと言う,落ち込むことを知らないイノシシボス(笑)が居て,きっと今もウルミア嬢にブツクサ言いながらタブナジア復興に向かって邁進している姿があって,それが瞼の裏に見えて,良かった.
そうでなかったら,このエンディングで 2 週間は凹んだ自信がある(笑)
きっと彼は,いつか王子であることを偽って地下壕に辿り着くだろう.オークの残存兵と戦いながら少しずつ侯国領を取り戻し,生き残りたちと共に鍬を振りつつ,年単位の時間をかけて侯国首都へと進んで行くだろう.そしていつか,あの懐かしの地に辿り着いたとき,彼はきっと何年何十年ぶりに笑みをこぼすに違いない.
彼は罪を償うことを生涯止めないだろう.だからこそ,彼がいつか笑える日が来ることを,その日を多くの人々と迎えられることを,願ってやまない.そして,それがそれほど遠くないだろうことも・・・.
え? トリオン王子???
ロシュフォーニュに比べて影が薄いと言うか(笑),ロシュフォーニュが主人公過ぎたと言うか,いや,なんか・・・王様になりそうな雰囲気はあったよねー,まる.
やっぱ薄幸の美青年ツヨイ.
トリオン王子は髪型から何とかした方がいいと思うんだよね(笑) 朴訥なところも嫌いじゃないけど.
でも薄幸の美青年最強!