バストゥークミッション9-1「最後の幻想」
友との一つの物語が終わり、新たな物語が始まるのだった。
バスミッションの続き。
日記を書いて気が付いたがランク9は最終ランクなので、あと2つ3つのミッションでバスの物語も終わるはずなのだった。その意味で、「最後の幻想」なんて出来過ぎなタイトルだなと、思わずニヤリとしてしまった。
その大仰な?タイトルにも関わらず、今回はアノ大臣からの依頼らしい。
守衛「また変な指令じゃなきゃいいんだけどな・・・」
と言われたが、まったく同感だった。
正直気乗りはしないが、「最後の幻想」のために大統領府へ向かう。
大臣「実はだな、ヴォルボー地方のある場所では、珍しい塩がとれるというのだ・・・」
うん、ゆで卵には塩が重要だしね・・・うん・・・。
依頼の内容をどこからか聞きつけたのだろう、
鉄喰「もう見逃すわけにはいきません! 公私混同にも程があります!」
アイアンイーターが血相を変えて執務室に飛び込んできた。
大臣「私は共和国民の 食生活の向上をと思ってな・・・」
適当な理由を付ける大臣に憤然とした様子のアイアンイーターだったが、
グンパ「まあまあ・・・ 落ち着きなって、アイアンイーター」
どこからかやってきたグンパが飄々とした体で割って入る。
どうしてここに?と問うアイアンイーターに「ちょっと ある人にお礼を言いにね」とはぐらかすグンパは、
グンパ「そんなことより、その塩って、奇跡の塩のことでしょ。実は聞いたことがあるんだ・・・」
と、なにやら詳しい。
「そうそう・・・最近健康に気を付けねばと思ってな・・・」とか「危険な場所と聞いて・・・勇者にこそ ふさわしい任務であろう?」とか適当な事を言う大臣に対しても、
グンパ「いいんじゃないかな、それ」
と話に乗り気のようだ。
その様子に釈然としないアイアンイーターだったが、
グンパ「僕に考えがあるんだ・・・。任せて」
と言うグンパに二の句が継げない。その様子を好機と悟った大臣は「この冒険者は受諾したのだ」と半ば強引に話を進める。
大臣「まずはラバオに行き、・・・私の従者のダンシングウルフに話を聞くようにな」
その横で、大臣には聞こえないよう「後でお願いがあるんだ・・・」と小声で告げるグンパ。
鉄喰「わかった・・・。語り部の言うことに従うとしよう」
グンパ「よしてよ、そんな言い方、気持ち悪い・・・」
残念なことに、先ほどアイアンイーターが口を噤んだのはグンパのではなく語り部の言葉に従ったからのようだった。あの演説でグンパを支持したアイアンイーターだったが、まだその認識には溝があるように冒険者には思え、「完成品」への道のりはまだまだ遠いなと思わずに居られなかった。
でラバオ。
なんとかウルフ多すぎ問題。
ようやく大臣の従者を見つけて話しかけると、
グンパとアイアンイーターもやってきた。
グンパ「言ったとおりだったでしょ。ウェライが昔話をしてたんだ・・・」
その口ぶりから、今回の「奇跡の塩」の探索もゼプウェル島調査の一環のように聞こえた。鉱山区の騒動も一段落したので、アイアンイーターも調査に随伴したのだろう。
鉄喰「おまえが今回の ミッションに口を出したのは、この話の由来を調べて、ガルカの歴史の 補完に役立てようとすることが1つの目的・・・」
鉄喰「ウェライならきっと 転生の旅の目的のひとつとして、この伝説の真相を 知ろうとするだろう。つまりウェライの行く先の 調査が2つ目の目的・・・そういう訳か?」
アイアンイーターが言うように、もちろんグンパには下心があった。
グンパ「ウェライは・・・旅の中で あちこちに手がかりを残していってる」「ちょっとカッコつけすぎだね」
珍しく挑戦的な目つきをしたグンパが独り言ちる。
グンパ「あいつの本当の最後を確認するまで 追っかけてやるんだ・・・」
グンパ「あと・・・実はもう1つ 目的はあるんだけど、それはまだ内緒ね。うまくいけばわかると思うよ」
彼がこの調査に乗り気だった最後の理由・・・。「まだ内緒」と言いつつそれなりに自信があるように見え、冒険者は深追いすることなくアイアンイーターと共に口を噤むことにした。
従者に拠れば「奇跡の塩」は「グスタフの洞門の地下水に海水が混じるために 発見されることがある」らしい。
従者「しかし周辺は 強力なモンスターが多いため、とても近づけません」
ゆで卵を美味しくいただく事に比してその危険度が割に合わない気がしたが、グンパの3つの目的のために一肌脱ぐ事にした。
「グスタフの洞門」は「テリガン岬」の北東から侵入できる洞窟だ。
(色々マーカーを置いた気がするが、ここも消えている。悲しい)
地図に記されたとおり、南がテリガン岬、北がバルクルム砂丘に繋がっている。
もう少し詳細に述べると、砂丘の北西にある隠し海岸にこの出入口が繋がっている。砂丘の地図を並べて照らし合わせると海岸の地下にこの洞窟が位置している事になるため、従者が言っていたように海水が滲み出すのだろう。その海水は年を経るごとに蒸発して濃度を増し、結果、塩分が析出して結晶化するのだろうと想像できた。黒海みたいな感じかな。
よくよく考えるとただの海水塩のような気もするが(笑)、滲み出す際にミネラル成分とかあんな成分とかこんな成分とかが溶けだし凝集して「奇跡」的な塩味に仕上がっているのかも知れない。
食べてみたい。
ルート選定に一瞬迷ったが、ワープ本を経由して
グスタフの洞門に直接向かった。
テリガン岬はアクティブな敵が多い気がして(個人の感想です)、ちょっと苦手なのよね。
近場に訓練本があったのでページをめくってみると、(ジョブポ稼ぎ用のミミズも居るが)奥地には Lv65、Lv75帯向けの敵が配置されているらしい。
ちなみに手前に配置された敵は Lv70青 から見て「練習未満」。
岬と砂丘の中間点(より若干西側)に更なる洞門が開けており、
奥には無数の「泉」(あるいは池)が存在する。
気が滅入りそうになったが(笑)、地図を「ふせた左手」に例えると小指側、つまり西端から時計回りに「泉」を調べていく事にした。
右回り・左回りはいつも通り適当に決めた。
途中にはゴブリンやカニなどのアクティブな敵がウロウロしており、適当に戦闘をしながら先へ進んだ。
ちなみにマップが切り替わったあたりから Lv70青 から見て「丁度」の敵が分布していた。
敵が密集しすぎ問題。
隙を見て右側をサササッと通り過ぎたが、ゴブに見つかっていたら大変な事になっていた感。それはそれで日記に書けるからいいか、と安直に考えて危険を楽しむ。
この辺りから、
敵は「とて」~「とてとて」。
基本的には隠密行動で進み、絡まれそうな場合だけ戦闘を挑むようにした。
最初の「泉」の傍に来たが・・・、ワイバーンが居座っていて調査ができない。しかも「とてとて」。
単体ならば倒せるだろうが、サカナもアクティブな気がして手を出せない。HP が減ればガイコツが生命感知して遠方からリンクする可能性も高く、阿鼻叫喚するさまが容易に想像できた。
さすがに観念し、MGS アイテムを使って調査する事にした。
で、ここはハズレ。
敵が密集しすぎてもぅ無理問題。
そんな感じで小指⇒薬指と調査を進める。
「泉」に住まうサカナはレベルが若干低く「つよ」。
チェックポイントがあってもこれなら倒せるなー、と思いながら探索を進めると、
アヤシイ「泉」が見つかる。
何がアヤシイかと言うと、期待通りにチェックポイントがあるばかりでなく、
まるでバリアが張られているかのようにぽっかりとした空間となっており、周辺に敵が居ない。
あぁきっと塩分濃度が高すぎて生物が生きられない環境なのだろう。ゲーム的に言えば、ボスが出ても安心して戦えるように雑魚を配置していないに違いない(メタ的発言)。
水辺をチェックすると予想通り「嫌な気配がした・・・」。
Lv71青。スライム戦。
「とて」~「とてとて」の居るエリアなのでこちらのレベルが足りないのでは?と思っていたが、予想に反して敵が弱い。
敢えて雑魚を排しているのだから適正レベルは周辺より低く設定されているのだろう、と安堵しながら
さっくり倒すと・・・
え?
スライムを倒したと思ったらスライムが2匹居た。
何を言っているのかわからないと思うが以下略。
倒したら更に分裂した。ひぃぃいいいいい。
え? これドラ〇もんのお饅頭が増えるヤツじゃないの!?
有能の代名詞ことヴァレンラールが「ウリエルブレード」で分裂したスライムを担ってくれるが、
返り討ちに遭い殴り殺された・・・Oh・・・。
たまたまヒーラーを2枚にしていたお陰で何とかタコ殴りに耐えるが、
一人二人と仲間は倒れ、
トドメの「フルイドスプレッド」。範囲内の仲間は死ぬ。
生き残りをかけて「花粉」を連打するけれど(笑) 35HP しか回復しない。悲しい。
でも残り1匹、これを倒せれば・・・
と思うじゃーん。
倒した瞬間に分裂したこの絶望を誰かに届けたい(笑)
ヒーラー無しでは2匹の猛攻に耐えられず全滅した。
リベンジ。
ギリ倒せそうだった?ので、コルモル⇒ギルガメに編成を変えて、ヴァレンラールとギルガメの範囲WSでの殲滅を狙ってみた。
がんばえーー!
最初に現れたスライムを スライムA1 とすると、A1を倒すことで B2 と C2 に分裂する。同様にB2 を倒すと D3 と E3 に、C2 が F3 と G3 に分裂する。そして3回目の分裂、D3 が H4、I4、E3 が J4、K4、 F3が・・・に分裂すると、それ以上は分裂しない。結果、合計15匹(1+2+4+8)のスライムと戦う事になる。
・・・酷くね?(笑)
正確に計った訳ではないが、スライムの 最大HP は分裂するたびに半分程度に減っているように感じた。そこで、分裂するたびに弱体化するのではないか?と想定して「できるだけ若番のスライム」=「強いスライム」を優先的に倒す事にした。A1、B2と倒したら C2、D3、E3が残る事になるが、この3匹のうち C2 を先に倒す形だ。
分裂したスライムの様子をよくよく観察して、より若いスライムを狙う。
が、結論としては失敗した・・・。
「若い」=「強い」は誤りで、若かろうが老いようがスライムの攻撃力には変わりが無く、やたらに増えスライムに盾が殴り殺された。やはり戦いは数の勝負なのだった。
盾を失った PT は容易に瓦解し、数匹のスライムに囲まれた冒険者は成す術なく地に伏した。・・・合掌。
3戦目。
大量の敵が現れるのならば、黒魔か吟遊の(範囲)睡眠が有効に思われた。分裂した片方を眠らせて、その間に他方を攻撃する。分裂するたびに同じことを繰り返せば1対1(1匹対6人)に持ち込めるはずだ。
ただしこのボスの場合、リキャストを考慮して分裂のタイミングを計らなければならない点が厄介に思えた。スリプルを詠唱したら次に詠唱できるのは30秒後。人間PTならばリキャストを「待つ」事は容易だが、フェイスPTの場合はフェイスたちの攻撃を止められない。戦闘を解除することで攻撃は止むが、その間は回復もできずに無条件に敵の攻撃を受け続けることになり、不慮の事故が想定された。
また「リキャストを待つ」こと自体がリスクだった。眠ったスライムもいつかは起きる。時間を空けることで次々にスライムが目を覚まし統制がが効かなくなる恐れがあった。
とかなんとか理由を考えながら、とりあえず範囲WSでの殲滅部隊で再トライすることにした。と言うか、スリプルの戦術を考えていたら面倒くさくなったので突貫した(白目)これでダメだったらサポ黒で試せばよい。
ちなみに「花粉」があまりに頼りにならないので、2戦目 のタイミングでサポ白にした(号泣)。
フルイドスプレッドまじヤバい。
今回は前回の反省を踏まえた。
スライムが分裂したら、若番ではなく老番から倒す事にした。
老番になるほど 最大HP が少なくなるので、範囲WS で殲滅しやすくなる。
分裂したスライムを一気に倒すこの戦法で、
あっさりとスライムを全滅せしめた。
ヴァレンラールは TP が溜まっていなくても「ウリエルブレード」を発動できるらしく、その範囲WS連打が勝因と言えた。まじ神。老番を狙うことで「より殲滅しやすくした」ことが勝利のカギとなった形だ。
勝利を祝して、明日はゆで卵を食べようと思った(笑)
「奇跡の塩」を持ち帰ったが、従者は何やら気にかかるらしい。
その理由を問うと、奇跡の塩の情報を調べている際に「あるガルカの少年」に出会ったと従者は言う。
従者「奇跡の塩らしき物を手に握り、さまよっていたところを 冒険者に発見されたと・・・」「転生の旅からの帰りではないかと・・・」
「あの少年ですよ」と従者が示すその先を見てグンパは絶句する。
グンパ「ま、まさか・・・」「そ、そんなはずは・・・」「でも・・・あの姿は・・・ 200年前の姿と同じ・・・ そう、一緒に遊んだ姿・・・」
グンパ「ウェライ!!」
呼びかけられたその少年はグンパの許へやってくる。
少年「ウェライ? 今ボクのこと、そう呼んだの? なんか思わず振り向いちゃったけど・・・」「悪い名前じゃないね」
残念ながら、少年はグンパの名前には聞き覚えが無いようだった。そして、その事については特に気にする事も無く、屈託のない様子でこれからの事を生き生きと語り続けた。
少年「もうすぐ出発するんだ」「なんかわくわくするよ。いいよね、・・・自由に旅するって。ボクもそんな風に 生きたいって思うんだ」
少年「なんかしっくりくるんだよね」
ウェライと言う名が気に入った少年は、そう言いながらこの場を後にする。
少年「じゃあ、そろそろ行くよ。おにいちゃん、また会えるといいね」
何も言えず棒立ちだったグンパは、その背を目で追いながら独り言ちる。
グンパ「人の気も知らないで勝手なことばかり 言いやがって・・・」「でも、しょうがないよな。ボクが・・・勝手気ままに生きてきたから、おまえが苦労したんだものな・・・」
ウェライなのか?と問うアイアンイーターに、グンパは投げやりに答える。
グンパ「わかんないよ。そんなこと・・・」
奇跡のおかげ。他人の空似。今起こった出来事には何とでも言い訳は立つだろう。でも、それを証明する手立てはどこにもない。
グンパ「でも、もういいんじゃないか。転生なんて、語り部にも残らない記憶だよ」
それが語り部のグンパが出した答えだった。
グンパ「難しく考えないで、残しておいてもいいんじゃないかな、そう、最後の幻想として・・・」
さっぱりとした顔をしながらグンパは続ける。
グンパ「ウェライと 名乗るガルカが1人また生を受け これから新しい人生を歩む・・・」「それだけで 十分じゃないか、それだけで・・・」
そして、いつしかまた一緒に冒険ができればそれだけで・・・。
ウェライ「記憶を失っても、私たちは、永遠に親友だ」
手紙に残されたその言葉をグンパはいつまでも心の中で反芻していた。
別れ際にアイアンイーターから声を掛けられ、思い出した。
鉄喰「奇跡の塩は 後で大臣のところに届けておいてくれ。このミッションはまだ終わっていない。グンパの狙いどおりならな・・・」
グンパの3つ目の目的を確かめるために大臣の許へ急いだ。
「共和国民の食生活」が云々と言う大臣に、唐突に現れた大統領補佐官が「それは楽しみですな・・・」と相槌を打つ。
大臣「な、なんだ、・・・何の用だ?」
狼狽える大臣とは対照的に、補佐官は冷静に話を進める。
補佐官「是非その奇跡の塩を 利用して共和国民の食生活の改善に 務めていただきたいものです」「もしそうでない場合は・・・」
大臣「ん? どういうことだ?」
理解できずに居る大臣に、補佐官は事の次第を噛んで含めるようにして伝える。
補佐官「このミッションにかけた 予算と今後の研究開発費は国から 大臣の商会に貸し出しただけです」「その成果によっては・・・当然無駄だった場合は利子をつけて 返済していただきます」
息を呑む大臣に補佐官は追い打ちをかける。
補佐官「御存じありませんでしたか? 国が民間の研究開発にも援助しようと制度を・・・ああ、会議中は眠っていらっしゃいましたか」
大臣「貴様・・・私に そのような口を・・・」
立て直しを図ろうと声を張り上げ威圧する大臣だったが、全ては後の祭り。
補佐官「圧力をかけても無駄ですよ。責任者は、私ですから」
背を向けた補佐官に大臣は二の句を継げず、振り上げた手をどうすることもできずにただ茫然としていた。
鉄喰「・・・と、言うことだ。しかし、グンパはどうしてこんな情報を・・・?」
グンパの3つ目の目的は大臣を懲らしめる事にあったらしい。補佐官の言に拠れば制度の変更があったようだが、それはアイアンイーターも知らなかった事らしく、なぜグンパが知っていたのかとしきりに首をかしげていた。
鉄喰「まあいい。何はともあれ、よくやってくれた」「それと、おそらく そのうちミッションで 北の地に再び向かってもらうことになりそうな気配だ」
語り部とウェライについて決着が付いたとすれば、残るは・・・。「私も・・・フォルカーと 会わなければならないだろう」と、そう言っていた仮面の男の顔が脳裏を過ぎる。北の地は彼ら二人の因縁の土地だ。
大臣の様子を窺うと補佐官への文句を口にしていたが、どうやら今回の件は失脚に至るほどの話ではないらしい。
ただ、経済的な被害は相当額に上るだろう。不世出の冒険者(笑)があれほど苦労して手に入れた「塩」の価値が、その労力に見合うとはとても思えない。・・・いや、「寿命を延ばす奇跡の塩」と題して売れば富裕層に受けるのかも・・・? いずれにせよ、大臣に商才があるようにも思えず、その人脈があるとも思えず、グンパの目論見は一時的に成功したように思えた。
一方、ミッションにかこつけて私利私欲を満たす手は封じられたが、あの大臣ならばこれからもあの手この手を駆使して権勢を振るうに違いないようにも思える。困ったものだ。
大統領執務室の奥には扉があり、
その奥にはコーネリアが控えている。
大統領府自体は公務に携わる者たちに用意された建物なので彼女がここに居る理由は良く判らないが、大統領の性格を考えれば私的に利用しているとは思えず、建物の一部を(日本の首相官邸のように)公邸として提供しているのかも知れない。
侍女に声をかけるとコーネリアが部屋から出、「お父様から依頼された用事でしょ?」と適当な理由をつけて室内に案内された。
扉を閉めて早々彼女は冒険者へ向き直り、言いたくて仕方が無かった風で「この前もね・・・ お客さんが来たの」と言う。
コーネリア「まさかあのお父様が この部屋に通してくれるなんて 思わなかったけど・・・」「あいつ・・・グンパがね、来たの」
その時を思い出すように目を細めながら彼女は話を続ける。
コーネリア「なんだかもじもじしてて、変な感じだったけど、いろいろ憎まれ口をたたきながらも、結局、『ありがとう』だって」
そう言った彼女は笑みを溢していた。
コーネリア「私、お礼されるようなこと、何もしてないのにね」「でも、ちょっと救われた気がするんだ」
そう言う彼女はこれまでとは違う優しい目で遠くを見つめていた。
コーネリア「あいつ・・・200年以上生きてるはずなのに、不器用なんだよね」「たった十何年しか 生きてない私が、そんなに器用に 生きられるわけがないんだ・・・」
コーネリア「そう思ったら、なんだか親近感わいてきてね・・・ いろいろ話しちゃった」
どうやら補佐官の言う新制度は、コーネリアからグンパに伝えられたようだ。
コーネリア「最近、少し勉強も 頑張ろうかな、って思ってるんだ。実はちょっと目標もできたの・・・」「それが何かは恥ずかしいから まだ内緒だけどね」
彼女は、自分がこれまでと変わったこと変われたこと、これからも変わりたいこと、を、冒険者に素直に打ち明けていた。新しい友人がそれをもたらしてくれたのだと、そう言っているように冒険者には聞こえ、瞳を輝かす彼女の未来が少しまばゆく思えた。
コーネリア「それじゃあ、またね。ありがとう、話し相手になってくれて」
気まぐれなコーネリアの言葉に侍女は半信半疑らしい。だが、そう思われようと、思われなかろうと、コーネリアは選んだ道を進んでいくのだろうと冒険者には思えた。
友に背を押され、誰もがみな、自分の道を歩み始めていた。