Vana'daily

Vana'diel 一人旅の日々.ばなでいり.

サンド〔S〕クエスト「オーク軍団掃討作戦」その2

なんか可愛いかも?と思うのだった。

 

オーク軍団掃討と言う無謀な作戦でオークに追い詰められたエグセニミルの話の続き。

先鋒を務めたオークが倒れると、人語オークことゾッグボッグはその様に呆れて悪態をついていた。

ゾッグ「テメェ、あんだけ吼えといて ぜんぜんよわっちいじゃねえか・・・」

が、次の瞬間、自分の窮地を悟ると

ゾッグ「エグセニミル!」「いずれオレサマは 貴様の命をもらいにゆく。貴様はオレたちの・・・仇敵だからな」

と言ってさっさと逃げ出していた。

「覚えていやがれ!」と分かりやすい逃げ口上を述べつつ駆け出したゾッグボッグは、意外に手強い相手かも知れない。少なくとも筋肉オークに無い知恵がある。・・・少し足りないけど。

窮地を脱して一息つくエグセニミルとラーアル。

そこに、チョコボに乗った王立騎士団の面々がやってきた。

少年騎士団員の報告を受けて最速でやってきたに違いない。

先頭はもちろんお姉さま。

アルテ「みんな、大丈夫!?」

騎士団員は周辺の警戒に当たるのだろう。

子供たちの世話を任されたお姉さまが少年たちに駆け寄るが、

彼女の登場にも関わらず、エグセニミルは両手剣を掲げたまま何の反応もしない。

ラーアル「どうしたんだ、エグセニミル?」

エグセ「・・・」

団員たちは包み隠さず全てを話したのだろう。見た目では分からないけれど、お姉さまは明らかに怒っている風だったが、

アルテ「エグセニミル!!」「あなた! やっぱり無謀な計画を立ててたじゃないの! 報せを聞いて、あわてて飛んできたのよ!」

その怒りは心配の裏返しだった。

お姉さまに叱られてしかめ面をするエグセニミル。

エグセ「・・・ふんっ。大人が何もしねーから、オレたちがオークを倒しに出ただけだ!」

アルテ「またそんなこと言って!! あなた、ぜんぜん伯爵の・・・!」

そこまで言ってお姉さまは気がつく。エグセニミルの悪態は自身の不甲斐なさの裏返しなのだと。

いかに自分は無謀だったのか。少し潤んだ目元がそう語る。彼はもう十分反省しているようだった。

アルテ「・・・」

だから、優しいお姉さまはそれ以上追及することをしない。

アルテ「・・・もう。心配するこっちの身にもなってほしいわよ」

せめてそれだけを言うと、お姉さまはほっと息を吐く。

アルテ「とにかく、みんなが無事で 本当によかったわ」

そしてこちらに向いたお姉さまは冒険者に礼を述べた。

アルテ「ありがとう。冒険者さん」「もし、あなたがこの子たちを 追いかけてくれなかったら、エグセニミルは 今ごろどうなっていたことか・・・」

ありがとう。

そう言ってくださるだけで天にも昇る気持ちになった。素直にお礼を口にするお姉さまの素直さが、礼儀正しさが、その飾らなさが純白の天使の羽を思わせて、嗚呼なんて神々しく美しい女性なのだろうと心の底から思う。

それに比べるとエグセニミルは実に幼い。

エグセ「おい 冒険者!」「べつにお前が 助けになんてこなくても、あんな奴ら、オレひとりでぶっ倒せたんだからな!」

・・・今にも泣きだしそうだったクセに。そう言ってちょっと弄ってやろうと思ったけれど、

前言撤回。

エグセ「それになぁ、お前、オークの嘘にだまされて脱走手伝うなんて、どんだけマヌケな奴なんだよ!」「ほんと、信じらんねぇぜ」

イマイマシい表情でこちらを見るエグセニミルには弄るなんて生易しい。鉄拳制裁しかない。

腰から短剣をヌラリと抜こうとしたその矢先、副団長が眩しい笑顔で冒険者に礼を言った。

ラーアル「でも、冒険者が 頼りになることはよくわかったよ」

・・・副団長に免じて剣を鞘に戻す。

なんて良くできた副団長なのでしょう、それに比べて・・・と思いながらエグセニミルを見やると、彼もようやく真面目な顔をしつつ一気に捲し立てた。

エグセ「まだお前のこと、信用したわけじゃねーけど、次の作戦会議にも ぜってー参加しろよ!」「これは少年騎士団長としての 命令だからな!!」

まあ、うん、分かってる。自分の不甲斐なさに腹を立てて彼が八つ当たりをしていることは。

ここはお姉さまのように大人な対応をすることが淑女の嗜みだと思い、そっと笑顔で返答しておいた。

アルテ「ふふっ、よかったわね。冒険者さん。エグセニミルに気に入られて」

途中からくつくつと笑いながら様子を見ていたお姉さまは、そう言って冒険者へ寄ると

アルテ「・・・そうね。あなたには教えておくべきね。エグセニミルのこと」

と神妙な面持ちで冒険者の目を覗き込んだ。

それはエグセニミルが大人たちに反発心を抱くようになった原因のことだった。

アルテ「実は、あの子・・・。お母上を亡くしているの」

王都に侵入したオークに母上を殺され、にも関わらず騎士団を率いる父は不在。肝心な時に何もできない大人に、少年でしかない彼が反目するのは当然にも思えた。

「大人はいつだってそうだ・・・。あのときだって、大事な時に親父は・・・!」、そう言っていた少年の、怒りに燃える眼差しを思い出す。

もう一つ、お姉さまは秘密を打ち明けてくださった。

アルテ「あたしね。あなたから以前聞いた 神殿騎士のこと、少し調べてみようと思うの」

神殿大騎士ダルヴィーユ。

少し探りを入れたのだろう、お姉さまは「やっぱり裏に何かありそうよ」と眉を顰めていた。おそらくオークと通じているのだろう。ただ、その目的が分からない。

アルテ「これ・・・子供たちを助けてくれたお礼です。受けとってください」

別れ際にお姉さまから何かを頂いた。

アルテ「じゃあ、この子たちはあたしが 責任を持ってサンドリアに送り届けます」

一緒に・・・と喉まで出かかるが、冒険者にこれ以上の迷惑はかけられないとその背中が語っていた。その心遣いは素直に嬉しかったけれど、この溝を飛び越えるためにはどうすれば良いのだろうと思いばかりが募る。

気が付けば、少年たちは遥か先まで駆けていた。

アルテ「もうっ! まったく反省の姿勢なし!」

そう言うと、お姉さまはヒラリとチョコボの背に乗り少年たちを追っていった。

アルテ「こらっ、少年たち! 次の任務はうちの庭で『雑草掃討作戦』よ! 覚悟しなさい!」

 

その背を目で追いながら、お姉さまは少し無理をなさっているのではないかしら、ふとそう思った。

エグセニミルが持つ父親に対するわだかまりを、二人の仲を、どう取り持てば良いのか彼女はこれまでも腐心しているのだろう。

ただ、今回の一件でエグセニミルは少しやり過ぎた感がある。下手をすれば彼は命を失っていた。もしエグセニミルを止めることが出来なければ、いつか悲しい結末を迎えることになるだろう。その恐れが現実味を帯びた一件と言えた。

単に監視役に過ぎなかった冒険者に色々な事を打ち明けてくださったお姉さま。おそらくそれは、親愛の情によるものではなく、エグセニミルに対する母性あるいは憐憫によるものではないかと思えた。

彼を助けたいという、その一心による。

彼女の目の中に私は居ないという現実は、冒険者の心をキュッと締め付けた。そぼ降る雨に打たれながら、叫び出したい気持ちを何とか堪える。寒さのような何かに震える肩を、一人でそっと抱きしめるほかなかった。

が、お姉さまに頂いたアイテムを見て気持ちが晴れた。

エンジェルストーン??

え? どういうこと?? エンジェル? 天にも昇る気持ちってこと??

デスストーンのあとにエンジェルストーン・・・。つまり、死んで天国に行きそうなほど私を愛してくださっているという意味なのでは?(なのでは?)