Vana'daily

Vana'diel 一人旅の日々.ばなでいり.

アトルガンミッション43「蒼獅子の最期」その2

思いがけない聖皇のお出ましなのだった。

 

今に思えばあからさまな罠と、命を賭したアミナフの妨害により、ルザフの奪還計画は断念せざるを得なかった。

不滅隊隊長ラウバーンの登場により、這う這うの体でサラヒム・センチネルへ戻った冒険者だったが、果たしてナジャ社長はいつも通りそこに居た。

無事で何より。

帰社早々、社長はアブクーバに、不在中に何も無かったのかどうかを問うていた。どうやら社長は、不滅隊がサラヒム・センチネルへ踏み込む可能性を予想していたらしい。

だが、アブクーバによれば、実際はそうではなかった。

ナジャ社長があの場に現れアミナフに弓引いた事を、不滅隊隊長が見逃すはずがない。ならば・・・、審判の日を目前にして、国内の不穏分子を封殺する余力すら不滅隊には無いのだろうか。

そう言えば、監視哨に逃げ帰った冒険者を気にかける不滅隊員は、ただの一人も居なかった。この場に何の障害も無く来られたことが、不滅隊に何らかの問題、あるいは最優先事項が生じていることを予感させた。

あるいは・・・、彼らは「餌」がやってくることをただ待っているのかも知れない。時は彼らの味方なのだから。

ナジャ社長側も、冒険者のその後を心配していたらしい。

シャッチョー「ああ、無事でよかったよぉ。なかなか戻ってこないから心配していたのさ~」

なんて、くねくねと品を作りながら冒険者に熱い視線を向ける社長の姿に少したじろいだが、次の瞬間、

シャッチョー「なにせ、あんたは あたいに、大きな大きな借りができただろ?」

と、いつもの昆虫を見るような目つきに戻る社長に、少し安堵した(笑)

アミナフ戦の助っ人代として、冒険者は社長に多額の負債を負う羽目になったのだった。

シャッチョー「それにしても あんたも無事、あたいも無事、本社にも異常なし・・・か」

どうやら社長も冒険者と同じ「不自然さ」を感じているらしい。

シャッチョー「ちょいと出来すぎなのが どうもひっかかるねェ」

珍しく思案する風のナジャ社長だったが、そんな彼女の邪魔をしてしまうことを恐れたアブクーバが、いかにも言いずらそうな雰囲気で声を上げる。

アブ「・・・そ、そういえば ナジャ社長」「あの、えっと うっかりしてました・・・。アフマウ様を社長室へお通ししてたのでした・・・」

 

・・・なんで忘れてるのw

おそらく社長室の扉の向こうでこちらを窺っていたのだろう、アブクーバのその言葉を待っていたかのように、アフマウが扉を破って部屋になだれ込む。

と言うか、顔面から床ダイブする。

・・・

何事も無かったかのように立ちあがると、彼女は服の埃を軽く振り払い、

アフマウ、いや、ナシュメラ2世が口を開く。

メラ「・・・」「わたしからも お話したいことがあります・・・」

(お、名前の表示がナシュメラになってる)

その瞬間、ナジャ社長は臣下の礼をとり深々と首を垂れると、相変わらず空気が読めないアブクーバを窘める。

シャッチョー「・・・アブクーバ。頭が高い・・・ッ」

慌てて跪くアブクーバだったが、何もわかっていない様子の彼に社長は苛立ちを隠さない。

シャッチョー「アブクーバ!!!!! 違うッ・・・御前である!」

彼女の怒号に、ナシュメラは君主の余裕、あるいは友人の親しみをもって応える。

メラ「いいのよ、ナジャ。アブクーバは、知らないことなんだから」

アブ「じ、じゃあぁあ・・・?」

ようやく、アブクーバもただならぬ雰囲気に気が付いたらしい。

声を震わせている彼に、ナジャ社長は小声で語り掛ける。

シャッチョー(あたいだって、初めて直にお会いしたときは腰を抜かしたもんさ)(でもね、その舌ったらずの声から 威厳のある聖皇様の声色に変えられえるのを 目の前で見せられちゃあネェ・・・)

 

(なるほど、無手の傀儡師はストリンガーを使わずに 2体の人形を操るのみならず、2種類の声色すらも操っていたのか。きちんと振り返ってないし今更だけど、赤い装束の時はアフマウ、白い装束の時はナシュメラ、なのかも?)

(うーん、FF11 に音声が付いてない事が惜しい。今だったら普通に付いているんだろうけど、20年前のゲームだし、そもそも登場人物数が半端ないからあり得ないか。ギルガメッシュ石塚運昇さんが良かったなぁ・・・ 涙)

ドラクエ 10 オフラインが出たし、しかも売れているみたいだし、ワンチャン FF11 オフライン 出ないかなぁ。出ないか。モノリスソフトが作ったりしないかなぁ。しないか)

さすがのアブクーバも、ようやく事の大きさに気が付く。

アブ(ということは、宮廷傀儡師のアフマウ様は・・・)

シャッチョー(実は、我が社のオーナー 聖皇陛下御本人でも在らせられたんだよ!)

アブ「!!!!!!」

そして卒倒するアブクーバ。合掌。

シャッチョー「それよりナシュメラ様。てっきり、安全なサラヒム士官学校で待っていただいていると思っておりましたが・・・」

いつも通りのアブクーバの事など歯牙にもかけず、ナジャ社長はナシュメラがここに居る疑問を口にする。

 

ああそうか、社長は不滅隊が聖皇の行方を追ってサラヒム・センチネルに踏み入る可能性を危惧していたのか。

アフマウが不滅隊の監視下から姿を晦ましたときに感じた、少しの違和感。彼女が単独で逃げ出した可能性よりも、それを手引きする存在を仮定した方が、どう考えても自然だ。冒険者には「鈴」が付いているはずだから、冒険者以外に不滅隊と敵対する者が居れば、おそらく、その者がアフマウと通じている。

不滅隊がそこまで思い至る事を想定して、ナジャ社長はアフマウを本社ではなくサラヒム士官学校へ匿っていたのだろう。士官学校なんて初めて聞いたけど(笑)

どうやらナシュメラは、「居ても立ってもいられなくって・・・」、士官学校を離れて本社へとやってきたらしい。

ん? 随分軽率な・・・と一瞬思うが、彼女にはそれなりな思惑あることを後で知ることになる。

冒険者たちが無事であることに安堵したナシュメラに、ナジャ社長がこれまでの事を掻い摘んで説明し始める。

ナイズル島を調査したが、機関巨人のある周辺ブロックは封鎖されていたこと。

おそらく、ルザフもそのブロックに移送されただろうこと。

そのブロックへ至る、警備の手薄な通路をひとつだけ発見したこと。

その先に、不滅隊に待ち伏せされて立ち往生している冒険者を見つけたこと。

メラ「どういうこと・・・?」

シャッチョー「ええとですね。冒険者は、社長である私に 無断でルザフを捜しに行っていたのです!!」

 

え? は?? そこ???(笑)

あ、いや、確かに日記を振り返ると、「腹黒のドゥザフ」を捜すように社長に言われたあとは、アフマウとルザフと合流した途端にラザフォードに嵌められ、気が付いたらアルタナ四国軍事会議に呼びつけられて、更にはナジの甘言につられてルザフ救出なんて大それたことを考えていた!

ああああっぁぁぁぁあああ、そうだ、ブラック企業社畜としては何は無くともホウレンソウ。ルザフと合流した時点で社長に報告して連絡して相談しなければならかなったのだああぁああぁあぁぁあああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛

あぁ???

え? ホントにそこなの???  まあ後の祭りではあるけど、社長と合流していれば陽動作戦などを執ってルザフ救出の成功率を上げられたかもしれないけど・・・。社長、何も言ってくれて無かったじゃーーーん。

メラ「まあ! ありがとう、冒険者♪」

ルザフ捜索の一言に喜びを隠さないナシュメラだったが、ナジャ社長はかぶりを振って否定する。

シャッチョー「・・・ルザフ救出に失敗してしまったのです。冒険者も そして、この私も」

メラ「・・・でも、2人とも 全力を尽くしてくれたのでしょう?」「わたしは、その気持ちがうれしいの」

うーん、なんだか憑きものが落ちた感がある。登場時は幼さを感じさせたあの少女の姿はそこにはなく、少なくとも、自分の感情を素直に口にできる普通の少女の姿がそこにはあった。

でもね、アフマウが笑うところって見たことがあったっけ・・・。

シャッチョー「ありがとうございます」

と社交辞令を返すナジャ社長。 

実際問題として、不滅隊隊長が待ち構えるあのブロックの防衛網は強固で、エースたる冒険者と社長の力をもってしても、いわんやサラヒムの社員をかき集めたとしても、容易に突破できるとは思えない。

手札に窮した社長の言葉が、自然と固くなるのも無理はない。

だが、意外にも解決の糸口はすぐに見つかった。

メラ「自信はないけれど 試してみたい方法があります・・・」

彼女が「居ても足ってもいられな」かったのは、この「方法」を思い立ったからではなかろうか。

それは、亡き母との思い出の中にあった。

メラ「わたし、幼い頃 母さまに連れられて1度だけナイズル島の奥まで探検したことがあるの・・・」「この霊銀の鏡を母さまが移送装置にかざすと、奥の部屋まで移送されたことは、はっきり今でも覚えてる」

シャッチョー「・・・では、それを移送装置にかざせば今も・・・?」

メラ「ええ、おそらく。母さまは2人だけの秘密だって言ってたから きっと兄も知らないと思うの」

丞相すら知らない秘密の移送方法があるのならば、完全に敵の虚を突くことができる。

シャッチョー「さっそくウチの傭兵をかき集めて機関巨人を破壊しに参りましょう」「そして、その足でルザフも救出してご覧に入れましょう!」

思いもよらぬ展開に興奮して捲し立てるナジャ社長だったが、ナシュメラは冷静に「もう時間がないの」と返す。

冒険者の乗る飛空艇を貫いた「聖なる矢」。それは、機関巨人の完動を、アレクサンダーの降神を、審判の日の到来が近いことを告げていた。

メラ「審判の日は、いつ来てもおかしくないわ」

シャッチョー「では、どうすれば・・・!」

慌てる社長に、聖皇は冷静に自身の計画を告げる。

メラ「機関巨人を止めるよう わたしが、兄を説得しに行きます」「その間にルザフを救出してください」

シャッチョー「ナシュメラ様がルザフ救出に向かわれたほうが・・・」

弱気な社長に、聖皇は事実に基づく正論を告げる。

メラ「説得に失敗したときは コントロールを外部から奪取するしか機関巨人を止める手立てはなくなると思うの」「それができるのは 母さまに人形プログラミングの手ほどきを受けたわたししかいないわ」

彼女は一人でこの計画を考え、その達成のために自らを窮地に追いやる可能性も厭わず、ただ審判の日の悲劇を避けんがため、真摯に助力を仰いでいるのだ。

静かに燃える白い炎のようなナシュメラのその気迫に、その覚悟に、ナジャ社長は姉のような優しさで応えるしかない。

シャッチョー「・・・かしこまりました。皇妃さまは、この日を予想されておられたのかもしれませんね」

 

そして、ナシュメラはまっすぐな眼差しを冒険者に向ける。

メラ「わたしは、もう聖皇ではないわ」「それでも・・・」「わたしと共に来てくれますか?」

 

・・・いいですとも!!!

ナシュメラから霊銀の鏡を手渡された。

メラ「あなたなら、きっと鏡とわたしを守ってくれる ・・・そう信じているわ」

こうして、ナジャ社長はルザフ救出に、冒険者とナシュメラは丞相説得に、機関巨人が待ち構えるブロックへ向かうことになるのだった。

メラ(・・・アブゼン、メネジン 見守ってて・・・)(・・・リシュフィー わたしに勇気をください・・・)

数多の別れが、少女を一つの決意に導いていた。

たとえそれが後悔の裏返しであったとしても、彼女の傭兵として、今はただ支えよう、そう冒険者は考えていた。これ以上の別れを、悲しみを、彼女にもたらすべきではない。

彼女は聖皇である前に、一人の少女なのだから。